研究概要 |
糸球体足細胞は、形態学的にもっとも分化した細胞の一つである。本研究では、この細胞の持つ複雑な突起の形態がどのようにして形成されてゆくかを明らかにするため、最近樹立された足細胞の培養株を用いて、突起形成過程における微小管の役割を研究している。 本年度は、まず研究代表者の異動(順天堂大学→愛媛大学)に伴い、新たに購入した細胞培養装置を所属研究室にセットアップし、細胞培養を開始した。また、培養足細胞を、ドイツ・ハイデルベルグ大学のW.Kriz教授・P.Mundel助教授より供与していただいた。 培養足細胞の突起は、微小管・アクチン線維・中間径線維を含んでいた。突起の形成途上にある培養足細胞に、微小管形成阻害剤を添加したところ、足細胞の突起形成は抑制された。この結果は、足細胞の突起形成が微小管に依存することを示している。現在、微小管機能を調節する機構に関して、蛋白質リン酸化に注目して研究を続行中である。 また、微小管の極性を電子顕微鏡を用いて調べたところ、培養足細胞の突起では微小管が双方向性の極性を持っていることがわかった。さらに、この双方向性の極性が、微小管依存性のモーター蛋白であるCHO1/MKLP1によって形成されることを、アメリカ・ミネソタ大学のR.Kuriyama教授との共同研究により明らかにし、論文として公表した(Kobayashi N et al.,1998)。微小管の極性に関しても、微小管の細胞質内での移動に注目して、解析を継続している。継続中の研究は、平成11年度には終了し、論文として公表する予定である。 本研究に関連して、足細胞と神経細胞の比較から、突起形成に共通する機構を考察した総説を発表した(Kobayashi N and Mundel P,1998;松田ら,1998)。また、足細胞全般に関して考察した総説の執筆にも、共同執筆者として参加した(Kriz et al.,1998)。
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