本研究はT型と呼ばれるカルシウムチャネルにα1Eカルシウムチャネルサブユニット(以下単にα1Eと略)が寄与しているのかどうか、寄与しているのであればその生理的機能は何かを明らかにすることを目的としている。本年度はまずT型カルシウムチャネルが存在すると考えられている心臓および精巣(精細胞)におけるα1E遺伝子の発現を調べた。われわれの作製したα1E遺伝子変異マウスは、α1E遺伝子内に大腸菌β-ガラクトシダーゼ遺伝子がインフレームで挿入されており、本来α1E遺伝子が発現する細胞でβ-ガラクトシダーゼを発現すると期待される。本酵素活性はX-galを用いた染色法により簡単に検出でき、α1E遺伝子の発現部位を簡便に調べることができる。しかし、心臓における発現はX-gal染色法では検出されながった。精巣においても同様にα1Eの発現を調べたが、内在性β-ガラクトシダーゼの活性が高く、特異的なシグナルは現在までのところ検出されていない。ただし、精巣においてはRT-PCRによりα1E遺伝子の発現が認められたので、対象を精巣(精細胞)にしぼって解析を進めている。α1E遺伝子ホモ変異マウスの精巣からは野生型のα1遺伝子のmRNAは検出できないことがRT-PCRの結果明らかとなった。このことはα1E遺伝子ホモ変異マウスにおいて正常なα1Eができていないことを示唆している。現在single cell RT-PCRにより精細胞1個のカルシウムチャネル遺伝子の発現を検出できるようにしており、各細胞におけるカルシウム電流の特性とα1E遺伝子およびα1G(典型的なT型カルシウムチャネルの構成成分であることが示唆されている)遺伝子の発現の有無との対応をα1E遺伝子変異マウスを用いて調べる予定である。
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