ラット腎髄質尿細管細胞における尿素輸送体(rUT-A1)の発現を、成人Wistarラットの腎髄質内層集合管の初代培養細胞を用いて、遺伝子(mRNA)レベルで調べた。昨年までに我々は、高浸透圧(200mOsmol NaClおよびマニトール)負荷後のmRNA発現の経時的変化をNorthern blot法により調べ、rUT-A1 mRNA発現量は24時間後に5倍増加し、36時間後では2-3倍の増加することを報告した。またAVP(10nM)および8-bromo-cAMP(1mM)の投与は、rUT-A1 mRNA発現量を24時間をピークとして増加させることも報告した。そこで本年はrUT-A1の遺伝子発現調節をさらに調べるために、NaClとAVPの同時負荷、NaClと尿素の同時負荷を行った。NaClとAVPの同時負荷では更なるrUT-A1 mRNA発現量の変化はなかったが、NaClと尿素の同時負荷により、発現量の有意な低下が見られた。また高浸透圧負荷後のmRNA発現に関与する因子を調べるため、細胞骨格維持に関与するmicrotubule、及びmicrofilamentを破壊するコルヒチン・サイトカラシンの効果を見た。両薬剤の投与はrUT-A1 mRNA発現量を変化させなかった。以上の結果より、腎髄質内層集合管細胞においては、rUT-A1 mRNA発現量は、腎髄質内層に存在するNaClと尿素の濃度により調節されていることを明らかにし、rUT-A1発現の調節には細胞骨格の関与は低いことを明らかにした。
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