これまでにウサギ腸腰筋(速筋)の筋原線維を材料として、筋原線維内でのATP加水分解反応の力学条件依存性を以下の方法で測定してきた。ガラス微少針に筋原繊維の両端を巻き付けて保持する。一方のガラス微小針の基部には電圧素子をセットして位置をコントロールする。ミオシン頭部に結合した蛍光ATPアナログがCaged-ATPから急速遊離させたATPで置換される速度からATP tumorverrateを測定する。様々な速度で短縮させながらrateを測定してその荷重依存性を調べられる。 本研究課題ではショウジョウバエの種々の筋肉を材料としてその特性を比較すべくまず間接飛翔筋をこの実験系に使用してみた。しかしこの筋肉ではATPアナログ(Cy3-EDA-ATP)の投与後Gaged-ATPから大過剰のATPを遊離させて完全な蛍光の減衰過程が得られなかった。原因としてはATPアナログが非特異的に結合しやすい物質が含まれている可能性や、構造がよりタイトで拡散が遅い可能姓があり現在のところこの実験系では使用できない。 今年度はウサギのひらめ筋の遅筋ミオシンを用いて、腸腰筋の速筋ミオシンの性質と比較した。結果、ひらめ筋の遅筋ミオシンアイソフォームの筋原線維内での性質として以下のことがわかった。速筋ミオシンと比較してヌクレオチドと強く結合した(Cy3-EDA-ATP対するKm:1.9μM、Cy3-EDA-ADPに対するKd:3.8μM)。等尺生収縮時のATP tumorver rateは速筋ミオシンの7倍遅かった。強制的な短縮速度を0.1筋原線維長/秒まで上げていくにしたがってATP tumover rateは速くなり、さらに短縮速度を上げると等尺生収縮時と同程度度まで遅くなった。逆に強制的な伸張を加えた場合にはATP tumorver rateは等尺生収縮時とあまり変化しなかった。このようなATPtumorver rateの荷重依存性は以前に速筋ミオシンで明らかにした傾向と同じであった。
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