レプチンはob geneからつくられる蛋白質であり、ここ数年の間にその生理薬理学的作用の一部が解明されてきた。先天的肥満マウスであるoblobマウスは、遺伝的にレプチンが欠損しており、レプチンを補給するとその体重が減少する。さらに、レプチン欠損マウスの体温および熱産生量は正常マウスと比し有意に低く、レプチンの末梢もしくは中枢投与で体温が上昇し熱産生量が増加する。これらの報告は、レプチンが体重調節のみならず体温調節に関与している可能性を示唆している。しかし、正常マウスや食物摂取過多による肥満マウス(非遺伝的)にレプチンを投与すると、それらの体重は減少するが、体温変動に関しては詳細に検討されていない。本年度はレプチンを正常ラットに投与し、その後の体温調節機構が変化するのか検討した。 ヒト-レプチンを非拘束・正常ラットの脳室内にマイクロインジェクションし、その後の体温変化をテレメトリーシステムを用いて48時間測定した。レプチンを投与されたラットの体重、食物摂取量および飲水量は減少した。また、その体温は、投与2時間後から上昇、5〜6時間後に最高となり、その後徐々に低下した。レプチンを投与したラットの体温は、vehicleを投与したラットの体温に比し、投与後30時間高値であった。 上記の結果は、レプチンが正常ラットの体温調節機構のうち、少なくとも体温を上昇させる方へ影響を与えることを示唆した。
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