研究概要 |
テニスに代表されるネットスポーツでは,試合では練習時に比べて「相手の動きについての認知」という精神作業が増えるので、思った所に返球できなくなることがよくある。すなわち相手の動きの認知時刻が打球動作のパフォーマンスに影響を与える可能性が考えられる。そこで本研究では、ヒトの巧みな随意運動メカニズムを解明するために、左右への打球打ち分け動作に打ち分け指示時刻の違いが与える影響について、主に筋出力を指標として調べることを目的とした。今年度は第一段階として、左右への打球動作時の筋活動について調べた。女子大学生10名(テニス経験者を含む、全員右利き)を被験者とし、ボールガイド上を転がってくる硬式テニスボールを、実験台上で特別に作製した小型ラケットで打球し、左右の的に入れることを課題とした。打球方向はボールガイドの左右に設けた刺激しEDの点灯により予め指示した。右上肢から、三角筋前部、三角筋後部、橈側手根屈筋、尺側手根伸筋の計4ヵ所について,表面筋電図をテレメーターシステム(日本光電WEB-5000)を介して導出し、生体現象取り込み装置(BIOPAC社MP100)によりコンピュータ(Macintosh)に取り込んだ。結果としては、左に打球する場合、右へ打球するよりも有意に早く動作を開始していた。また、左に打球する場合は撓側手根屈筋が、右へ打球する場合は尺側手根伸筋がそれぞれ早く放電を開始し、放電時間が長く、積分値も大きかった。この結果を踏まえて、次年度には選択反応課題における打ち分け指示時刻の違いの影響について検討する。
|