研究概要 |
IL-6は炎症性サイトカインの一種であり、近年は神経栄養因子の一つとして知られている。IL-6の神経細胞死抑制機構の解明として以下の如く検討を行った。 (方法) (1) ラット心停止モデルを作成し海馬領域における虚血後のMAPキナーゼスーパーファミリー(SAP kinase,ER kinase,p38)活性を生化学的手法を用いて経時的に測定を行った。 (2) 同モデルを作成し虚血直後よりIL-6をミリオスモルポンプを用いて側脳室内に持続投与を行い、海馬領域におけるMAPキナーゼスーパーファミリー(SAP kinase,ER kinase,p38)活性を同様に測定した。 (結果) 虚血後1時間後より、SAP kinase,ER kinase,p38共に上昇し3から6時間をピークにその後は徐々に低下していた。IL-6投与群ではSAP kinase,p38の上昇は抑制されており、逆にER kinaseは経時的に上昇していた。 (考案) SAP kinase,p38はアポトーシスのシグナル伝達系路として知られており、ER kinaseはむしろ細胞の分化増殖に関与しているといわれている。今回の結果によって虚血後の海馬における遅発性神経細胞死(アポトーシス)のシグナル伝達経路としてSAP kinase,p38が関与していて、IL-6がこれらのMAPキナーゼスーパーファミリーの活性を抑えることが解明された。 このことはIL-6の神経細胞死抑制機構においてMAPキナーゼスーパーファミリー(SAP kinase,p38)がシグナル伝達系路として重要であると考えられた。 来年度はIL-6ノックアウトマウスを用いて同様の検討を行う予定である。
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