雄ラットの性行動は、発情した雌に乗り掛かるマウントという動作として観察され、マウントのなかでも雌の膣への陰茎の挿入を伴うものは特にイントロミッションと呼ばれる。このマウントとイントロミッションを十数回くり返すと射精にいたり、不応期を経て再びマウントとイントロミッションをくり返す。このときの筋電図を記録したところ、これらの行動に対応する筋電図波形はそれぞれ特徴を持っていた。どの場合の筋電図も球海綿体筋と坐骨海綿体筋はほぼ同時に発火を始め、終息していくが、1.マウント時の筋電図では発火開始の後、坐骨海綿体筋に急激な振幅の増加を認めた2.イントロミッション時では坐骨海綿体筋の急激な振幅増加の後、球海綿体筋の振幅増加及び短い休止がみられた。3.射精時では発火の後同様に坐骨海綿体筋の振幅の増加、球海綿体筋の振幅の急激な増加と短い休止を認めたがイントロミッションと違い、球海綿体筋と坐骨海綿体筋の両方に発火、休止を繰り返す発火パターンがみられ全体の発火の持続時間は長かった。しかし必ずしも二つの筋のその発火は一致しないことがわかった。 その波形を振幅による相に分け、各々の相における周波数分布を比較した。その結果膣への陰茎の挿入を伴うイントロミッションでの球海綿体筋の筋電図のうち振幅の大きい部分に明らかな二峰性の周波数分布がみられたがマウント及び、射精時の波形の解析ではこのような変化はみられなかった。今後はこれらの解析をさらに進めてセロトニン作動薬など薬剤の効果や陰茎内圧の実測を併せて検討する。
|