研究概要 |
Naチャネルの細胞膜発現の調節機構を解明するために、発生学的に神経堤に由来するウシ副腎髄質クロマフィン細胞を用いて、(i)細胞膜Naチャネル量を変動させる細胞内外の因子を同定し、さらに、(ii)その際のNaチャネルのサブユニットmRNAレベルの変動と細胞内輸送・局在化機構を解析し以下の結果を得た。 1. Protein kinase C(PKC)による調節:チメレアトキシン(conventional PKCの活性薬)、Go6976(conventional PKCの阻害薬)、フォルボールエステル、ブレフエルジンA(ADP ribosylation factor-1阻害薬)などを用いた。(1)PKC-αの活性化は、Naチャネルの細胞膜表面からのendocytosisを促進した。(2)PKC-εの活性化は、Naチャネルα-サブユニットmRNAレベルを低下させ、β_I-サブユニットmRNAレベルを上昇させた。(3)α-サブユニットmRNAレベルの低下は、その遺伝子転写率の低下によるものではなく、mRNA崩壊率の亢進に由来した。(4)PKC-αおよび-εの効果は、蛋白合成に依存していた。 2. Mitogen-activated protein kinase(MAPK)による調節:培養ウシ副腎髄質クロマフィン細胞では、恒常的にMAPK(ERK1,ERK2)が活性化されており、PD98059(MAPKKの阻害剤)によってその活性化を抑制すると、細胞膜Naチャネル量が著しく増加した(12時間で、約1.5倍)。この時、Naチャネルのα-および、β_I-サブユニットmRNAレベルは不変であった。 3. 細胞内[Ca]_iによる調節:A23187(Caイオノフォア)および、タプシガルギン(小胞体Ca-ATPase阻害薬)による[Ca]_iの持続的上昇は、細胞膜Naチャネル量、α-およびβ_I-サブユニットmRNAレベルを低下させた。2,5-di-(t-busyl)-1,4-benzohydroquinone(DBHQ)による一過性[Ca]_i上昇は、効果がなかった。 4. 神経保護薬による調節: リルゾール、NS-7[4(4-fluorophenyl)-2-methyl-6-(5-piperidinpentyloxy)pyrimidine hydrochloride]は、Naチャネルα-サブユニットのドメインIトランスメンブレン・セグメント6に結合し,Naチャネル開孔を阻害し、その結果、Caチャネル開孔、カテコールアミン分泌を低下させた。長期処置によって、リルゾールはNaチャネル量を変動させないが、NS-7は増加させた。
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