研究概要 |
カルモジュリン(CaM)は、生体組織に広く分布し燐酸化酵素、脱燐酸化酵素など多くの蛋白質に結合し、それらの機能をCa^<2+>依存性に調節する役割をもつと考えられている細胞内蛋白質である。そして骨格筋細胞においてもCaMは約2μM程度存在すると考えられているが、骨格筋細胞のCa^<2+>によるCa^<2+>放出(CICR)をCa^<2+>濃度に応じて、促進あるいは抑制する作用を有している。このCaMのCa^<2+>放出に対する二相性作用は、骨格筋に存在するリアノジン受容体(RyR)のCa^<2+>放出チャネルとしての機能を促進あるいは抑制する結果であると考えられてきた。申請者らは骨格筋細胞には骨格筋型(RyR-1)および脳型のリアノジン受容体(RyR-3)という二つのRyRサブタイプが存在することに注目し、RyR-1あるいはRyR-3のみを発現した変異マウスの骨格筋細胞を用い、二つのRyRサブタイプそれぞれに対するCaMの作用を比較した。その結果、両サブタイプは共にCaMによりCa^<2+>濃度に応じて促進と抑制の二相性調節を受けるものの、RyR-1を介するCa^<2+>放出はCaMによる促進が顕著であり、RyR-3を介したCa^<2+>放出は逆に抑制を強く受けることを明らかにした(Ikemoto eta al.,1998)。また、以前作成したRyR-1およびRyR-3を同時に欠失したマウスの種々の臓器、組織における形態的特徴を観察し、二つのRyRsを同時に欠失した場合、肝臓をはじめとした多くの組織で形態異常が観察されることを明らかにし、非筋細胞におけるRyRsの役割を解明する手がかりとなる情報を得た(Komazaki et al.,1998)。 一方、RyR-1はCICRチャネルとしての機能と共に骨格筋において最も重要である生理的Ca^<2+>放出チャネルとしての機能を持つことが知られているが、両者は同じRyR-1チャネルの異なる開口様式の結果であると考えられていながら、その関係には不明な部分も多く、現在薬理学的手法を用い、リアノジン受容体の生理的なCa^<2+>放出の開口様式の解析を進めている。
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