血球細胞特異的な転写囚子NF-E2の関連因子として、Nrf3(NF-E2-related factor 3)を単離した。その発現様式と構造的相似性から、これら因子も造血細胞発生過程において機能することが示唆される。現在までに以下の知見を得た。 1 Nrf3は、ヒト胎盤、胸腺そしてB細胞分化の後期に発現する転写活性化因子であることを見出した(J.Biol.Chem.(1999)印刷中)。特にB細胞においては、抗体重鎖遺伝子(IgH)の3'enhancerのLCR(locus control region)に存在する結合配列MARE(Maf recognition element)に対し、同じ関連因子であるBach2が抑制的に作用することから、Nrf3は分化後期に拮抗的に作用する可能性を示唆した。 2 Nrf3は、小Maf因子群のMafKとヘテロ二量体を形成し、MAREに結合し、それらの親和性は関連因子群の中では中程度であった。 3 Nrf3遺伝子は、他のNF-E2関連因子と同様にヒト染色体上でHox遺伝子クラスターの近傍に位置していた。この事実は、これら関連因子が共通の祖先遺伝子からchromosome duplicationにより派生したという仮説を支持した。 今後の方針の一つとしては、現在進行中のNrf3ノックアウトマウスの作製を完了し、詳細な発現解析を元に変異形質を解析して、Nrf3の生理機能をさらに明らかにする。
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