申請者はキサンチン脱水素酵素のもつ補酵素の一つであり、今まで機能不明であったサブユニット当り2個存在する鉄硫黄中心の機能、高次構造上の位置を明らかにするため、これら鉄硫黄中心のリガンドと考えられるシステイン残基をアラニン、セリンへと変換した変異酵素を昆虫細胞を用いた発現系にて発現させ、その機能について検討した。 平成10年度の研究実績の概要は以下の通りである。 申請者は3リッター程度の大規模昆虫細胞培養系を確立、継続的に運用する事に成功した。昆虫細胞及びバキュロウイルスを用いた発現系によりリガンドと推定されるシステインをセリン、アラニンに変換した変異酵素を数種作成し、イオン交換クロマトグラフィー、リン酸カルシウムクロマトグラフィー、ゲルろ過を用いてそれら変異酵素の完全精製法を確立した。さらにそれら変異酵素の電子スピン共鳴スペクトルを測定、解析を行った結果、2個の非ヘム鉄のリガンドとなっているシステインクラスターを同定することに成功した。これらの成果により2個の鉄硫黄中心の高次構造上の部位、他の補酵素との位置関係、還元状態の鉄イオウ中心内での電子の局在について推定する事が出来た。 今回の結果および過去に行った天然型酵素の分子内電子伝達の結果より、2個の鉄硫黄中心の酵素活性における機能は大きく異なっており、一方が活性に不可欠であるのに対し、他方は高次構造の維持に重要である事が分かった。 以上に述べた成果は平成10年度の日本生化学会シンポジウムにて発表を行っている。
|