生体内情報伝達機構のセカンド・メッセンジャーであるサイクリックGMP(cGMP)は、ナトリウム利尿ペプチドなどの生理活性ペプチドや内皮由来弛緩因子(EDRF)である一酸化窒素(NO)に応答し産生され、循環器系、消化器系の機能調節をすることが知られている。今回申請者は、脳・神経系におけるcGMPの関与を明らかにするため、中枢神経系に特異的に発現する新規な受容体型グアニル酸シクラーゼ(GC)の遺伝子の同定を試みた。 申請者はまず、脊椎動物で既に同定されているGC(GC-A〜F)間で特に保存されている触媒領域の塩基配列をプローブとして用い、以下の遺伝子ライブラリーを作製し検索を行った。 (1) ラット全脳のmRNAから遺伝子各々の全長を含むよう合成したcDNAライブラリー(dTプライム) (2) ラット全脳のmRNAから遺伝子断片を合成したcDNAライブラリー(ランダムプライム) (3) ラット肝臓より調製したゲノム遺伝子ライブラリー まず(1)より9個の陽性クローン単離し、その全塩基配列を決定したが全て偽陽性であった。その後、(2)(3)について検索を行った結果、それぞれ76、24個の陽性クローンを単離することに成功した。それらの中には既知GCも含まれていたが、残りのものについては現在、含まれている遺伝子中に目的とするGCをコードする塩基配列が存在するか解析を行っている。 申請者は当初、目的とする遺伝子の全長の単離を試みたが、これまで同定されている受容体型GCの遺伝子は他の遺伝子に比べ長く、また組織含量も非常に少ないことから、単離することは困難であることが予想された。そこで目的とする遺伝子の断片、またはゲノム遺伝子を単離した後、全長を得る手法に変更し、新たに(2)(3)の遺伝子ライブラリーを作製し検索を行った。その結果、数多くの陽性クローンが単離され、そのシグナル強度からも複数の遺伝子(新規GCをコードする)が得られたものと考えられる。
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