本年度は新しい生理活性ペプチドの精製を行った。ブタ脳20kgを出発材料としてこれを煮沸、1M酢酸で抽出し、粗抽山液を得た。この粗抽出液からアセトン処理により分子量の比較的大きい蛋白成分を除去し、強イオン交換樹脂であるSP-Sephadexで分離した。この中で2Mピリジン-酢酸で溶出される画分ををSephdex G-50で分子量によって分離し、分離されてきたフラクションの中で分子量が1万Da以下に相当する部分を更にSephadex G-25で分離した。この段階でブタ上皮細胞LLC-PK1を各フラクションで刺激し、それぞれの細胞内cAMP産生活性を測定した。その中でコントロールに対し有為に細胞内cAMP濃度を上昇させるフラクションを集め、弱イオン交換クロマトグラフィーCM-52を用い、最初はpH6.5で、その分離されてきたフラクションの中で活性のあるものを更にpH3.8で展開した。最終的にC18及びphenylの逆相ク口マトグラフイーにより分離し、50pmol程度の単一ピークを得ることができた。このペプチドをアミノ酸シーケンサー及びマススペクトルを用いて解析した結果、今まで報告されていないアミノ酸配列を持つペプチドであることが分かった。このペプチドはカルシトニン遺伝子関連ペプチドと相同性を有するものの、その受容体に対する親和性はほとんどなく、むしろカルシトニン受容体に対してカルシトニン自身よりも強い生理活性を持つ事が受容体の解析から判明した。今後はこのペプチドの遺伝子解析等を進めていく予定である。
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