あらかじめ血管内皮や平滑筋細胞においてヘムオキシゲナーゼ1(HO-1)を誘導や阻害しておくと酸化LDLによる単球の遊走能がそれぞれ抑制、亢進されることを報告した。この単球の遊走能の変化を引き起こす分子としてMCP-1が関与することがさらに明らかになった。生体内で実際にHO-1が動脈硬化の発生と進展とに関わっているかどうかを調べるためにマウスモデルを使用している。高脂肪食後に形成された大動脈の動脈硬化巣を免疫組織染色したところ、硬化巣内の血管内皮細胞、平滑筋細胞、マクロファージにおいてHO-1が発現されていることが明らかになった。いくつかの代表的なマウスモデルのいづれにおいてもHO-1の発現が観察されたことから、HO-1が動脈硬化の形成に何らかの役割を有している可能性が高い。現在、LDL-Rノツクアウトマウスでの動脈硬化巣形成の過程においてHO-1の活性を亢進あるいは、阻害した場合に動脈硬化の形成が抑制や促進を受けるかどうかを観察している。現在のところ、HO-1が抗動賑硬化的に働くデータを得ている。また、HO-1とHO-2ノックアウトマウスをC57/BL6にb1ackcrossさせ、野生型と動脈硬化への感受性を検討している。現在、高脂肪食負荷を実施中であり、来年度中に解析を行える予定である。また、HO-1とHO-2のノックアウトマウスとLDLレセプターノックアウトマウスおよびApoEノックアウトマウスとのダブルノックアウトマウスを作成している。これらのモデルはより容易に脂質代謝を含めた動脈硬化へのHOの影響の観察を可能にすると想定している。
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