Cdc42はRhoファミリーに属する低分子量GTPaseで、活性化によりアクチン再構成を誘起し糸状突起の伸張を促進するほか、接着斑形成、セリン・スレオニン-キナーゼPAKの活性化、JNK-MAPキナーゼ活性化、DNA合成促進などの多彩な細胞機能を制御している。しかし、これらの細胞応答の具体的なシグナル経路については殆ど不明である。本研究では、Cdc42特異的活性化因子(グアニンヌクレオチド交換反応因子)FGD1がどのような分子メカニズムでCdc42依存性の細胞内現象を制御しているか、さらに、これらの機能発現におけるFGD1のDH領域およびPH領域の役割を解明を試みた。その結果、1)Cdc42によるJNK活性化、DNA合成、およびアクチン再構成は、各々異なるエフェクター分子により制御されていること、2)アクチン再構成を起こすためには、FGD1がPH領域を介して細胞内の特定の部位に局在し、そこでCdc42を活性化する必要があること、3)PAK活性化は、JNK活性化には不要であること、4)FGD1にはCdc42以外の標的蛋白質が存在する可能性が高いことを明らかにした。一方、FGD1のDH/PH領域を用いた酵母Two-hybridスクリーニングを行い、FGD1に結合する蛋白質の同定を試みた。現在までのところ、ヒト脳ライブラリーから4種類の陽性クローンを単離しており、それらの塩基配列を決定中である。
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