Rap1AはRasと類似の構造を持つ低分子量GTP結合蛋白質であり、RasによるRaf-1活性化を阻害する。我々は、Rap1AがRaf-1のcysteine-rich領域(CRR)に強く結合し、Raf-1、Rasと共に三者複合体を形成することを発見した。昨年度、プロテインキナーゼAによりRap1Aが燐酸化を受け、CRRの結合能力と三者複合体形成能力が失われることを証明した。燐酸化部位のセリンをグルタミン酸に置換したRap1A変異体は、Ras、Raf-1と共発現したところ、Raf-1活性化を阻害する能力も失っていた。さらに、細胞内でRap1A、Raf-1、Rasが三者複合体を形成することを確認した。Rap1AはRaf-1のホモログB-Rafに対して逆に活性化作用を持つことが知られていたが、B-RafのCRRについてRasおよびRap1Aとの結合強度を測定したところ、Raf-1とは対照的にRap1Aとの結合強度の昴進がなく、Rasと同程度であることを見い出した。また、Raf-1とB-Rafの間でCRRを交換したキメラを作成したところ、Rap1AはCRRの種類に依存してRafを阻害または活性化することがわかった。上記の結果は、Rap1AがRaf-1のCRRとの結合強度に基づき、Raf-1の活性化を制御していることを強く支持した。最近我々が発見した新しいRasエフェクターホスホリパーゼC(PLC-ε)の活性調節におけるRap1Aの役割を検討した。試験管内でPLC-εのRAドメインは活性型Rap1Aと強く結合した。さらに、細胞内でRap1Aとの共発現により、PLC-εが細胞質からRap1Aが局在する核周辺およびゴルジ小体へ移送され、ホスホリパーゼC活性が活性化されることを示し、Rap1Aのエフェクターである事を証明した。
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