ヒトがんにおける染色体ホモ欠失領域、過メチル化領域からのがん抑制遺伝子の単離

1998 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 10770067
• 研究機関: 国立がんセンター
• 研究代表者: 河野 隆志 国立がんセンター, 研究所・生物学部, 研究員 (80280783)
• キーワード: がん抑制遺伝子 / 染色体欠失 / 過メチル化 / 物理的地図

研究概要

近年、新しいがん抑制遺伝子がヒトがんにおける染色体ホモ欠失領域から単離され、ホモ欠失ががん抑制遺伝子の単離・同定のための有用な材料であることが認識されている。また、いくつかのがん抑制遺伝子では、プロモーター領域の過メチル化によって遺伝子の発現が抑制されるという、新しい遺伝子不活化のメカニズムが明らかになってきている。そこで、ヒトがんの発生・進展に関わる新しいがん抑制遺伝子の単離・同定を目的として、各種ヒトがん細胞株に対し、マイクロサテライトマーカーを用いたDeletion mapping、Candidate geneスクリーニング、arbitrarily-primed PCR解析を行い、新しい染色体ホモ欠失、過メチル化領域の検索を行った。その結果、肺がんにおいて染色体9p21領域、18q21領域、21q11-q21領域に新しい染色体ホモ欠失領域を検出した。また、これらの領域は肺がん以外にも、腎臓がん、神経芽種(9p21)、胃がん、大腸がん(18q21)、乳がん(21q11-q21)でもホモ欠失が見られた。また、肺がんにおける新しい過メチル化領域を3ヶ所、染色体4q34、10q26、17p13.1-13.2に同定した。これらの領域には既知のがん抑制遺伝子が含まれていないため、新しいかん抑制遺伝子が存在する可能性がある。現在、これらの領域の物理的地図を作製し、領域内に存在する遺伝子の探索を行なっている。また同時に、種々のヒトがん細胞株における新しいホモ欠失領域、過メチル化領域の探索を継続して行っている。

研究成果

• [文献書誌] Kohno,T.,Kawanishi,M.,et al.: "Homozygous deletion and frequent allelic loss of the 21q11.1-q21.1 region including the ANA gene in human lung carcinoma,containing DNA." Genes,Chrom.Cancer. 21. 236-243 (1998)
• [文献書誌] Kohno,T.,Kawanishi,M.,et al.: "Identification of CpG islands hypermethylated in human lung cancer by the arbitrarily primed-PCR method." Hum.Genet.102. 258-264 (1998)
• [文献書誌] Kohno,T.,Takahashi,M.,et al.: "Inactivation of the PTEN/MMAC1/TEP1 gene in human lung cancers." Genes,Chrom.Cancer. 22. 152-156 (1998)
• [文献書誌] Hamada,K.,Kohno,T.,et al.: "Association of CDKN2A(p16)/CDKN2B(p15) alterations and homozygous chromosome arm 9p deletions in human lung carcinoma." Genes.Chrom.Cancer. 22. 232-240 (1998)
• [文献書誌] Takei,K.,Kohno,T.,et al.: "A novel tumor suppressor locus on chromosome 18q involved in the development of human lung cancer." Cancer Res.58. 3700-3705 (1998)