間質性肺炎および肺線維症の成因に関して、細胞外マトリックスの代謝異常という観点から検討するにあたり、まずマトリックスを産生する上皮の面と肺の血管系の面から検討を加えた。間質性肺炎においてはII型肺胞上皮が腫大・増加し、異型性を伴うようになるが、病変の進展に関して、肺胞上皮の動態と何らかの関連を持っていることが示唆された。また、間質性肺炎では顕著な硝子膜形成を伴うこと、および前述の様なII型肺胞上皮に変化がみられることから、II型肺胞上皮により産生される表面活性物質(サーファクタント)の動態と何らかの関連をもっていることが示唆された。間質性肺炎と同様の組織学的変化は新生児呼吸窮迫症候群(IRDS)にも認められ、両者の病態には共通性がある可能性が考えられることから、肺胞上皮、間質細胞、およびサーファクタントが肺の発生過程においてどのように推移するかに関して、各種サイトケラチンや増殖マーカー、サーファクタント蛋白に対する抗体を用いて免疫染色による検討を行った。また、間質性肺炎ではIRDSと同様に、肺胞壁の血管透過性の亢進や血管の傷害もその成因として示唆されることから、肺動脈のエラスチンの架橋アミノ酸に関して高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による検討を加えた。肺動脈では体循環系に比較してエラスチン含有が低いことが示唆され、このことが肺血管系の脆弱性につながり、病態との関連性が示唆された。
|