研究概要 |
滑膜肉腫におけるE-(EC))及びN-Cadherin(NC)の局在を免疫組織化学的に検討した.2相型滑膜肉腫(BSS)3例,単相線維型(MFSS)5例の新鮮凍結切片及び抗ECモノクローナル抗体及び抗NCモノクローナル抗体を用いた.その結果,ECはBSSの上皮成分にびまん性に発現する一方,紡錘形細胞成分及びMFSSでは陰性であった.NCはBSSの上皮成分のごく一部に陽性所見をみるのみであった.さらにECについてBSS及MFSSの細胞株を用いたWestern blottingを行った.その結果,BSSにおいてのみ125kDaの陽性のバンドが認められた.さら上記の新鮮凍結材料よりメッセンジャーRNA(mRNA)を抽出し,ECに特異的な領域にプライマーを設定し,RT-PCR法を行い,BSSのみにECmRNAの発現を認めた.以上よりECの発現がBSSの上皮成のみにみられ,上皮形態形成に強く関与する可能性が示唆された. 一方hepatocyte growth factor(HGF)の腫瘍組織内でのmRNAの局在を明らかにするため,ジゴキシゲニン標識HGFcRNAプローブを作成し,BSSの新鮮凍結材料を用いてin situ hybridization法を施行した.HGFmRNAの陽性所見は得られず,既知のRT-PCR法の陽性の結果との解離がみられたが,RNAの保存状態などの検討が必要と考えられた.さらにBSS培養細胞株(SW982)に1,10,100ng/mlリコンビナントHGFを添加し,72時間観察した.明らかな形態変化や分散活性は認められなかったが,さらに培養方法やその他の形質の変化について詳細な検討が必要と考えられた.
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