研究概要 |
食道粘膜内癌(m癌)30例、粘膜下層癌(sm癌)77例、進行癌41例を用いて癌細胞における matrix metalloproteinase(MMP)-1,2,3,7,9,Tissue inhibitor of matrix metalloproteinase(TIMP)-1,2,membranetype 1,2 matrix metalloproteinase(MT1-MMP,MT2-MMP)の発現を検索し、癌の深達度、大きさ、分化度、リンパ節転移の有無、リンパ管侵襲、静脈侵襲の有無との相関を検索した。 1. 食道癌細胞にはMMP-7,9,TIMP-2,MT1-MMPが高頻度に陽性を示した。MMP-2は癌細胞周囲の間質細胞には陽性所見を認めたが、癌細胞自身については発現は弱かった。 2. MMP-7,9,MT1-MMPの発現は癌の深達度が進むに従って高頻度に認められた。MMP-7の発現頻度はm癌とsm癌の間に、MMP-9はm癌とsm癌、sm癌と進行癌の間、MT1-MMPはm癌とsm癌、sm癌と進行癌の間に有意な差を認めた。sm層浸潤の程度を3段階にさらに分けて調べると、MMP-7とMT1-MMPの発現頻度はsm2とsm3の間に有意な差が認められた。食道癌のリンパ節転移の頻度はm癌とsm癌、sm癌と進行癌、sm2癌とsm3癌の間に有意な差が認められる。このことはMMP発現が癌深達度とともに高頻度になることと対応する。 3. MIVP-7,9,MT1-MMPの発現頻度は癌の腫瘍の大きさ、リンパ節転移の有無、リンパ管侵襲の有無では有意な差が認められなかったが、静脈侵襲の有無では有意な差が認められた。また高分化型扁平上皮癌に高頻度に発現が認められた。 食道sm癌においてMMP-7,9,MT1-MMPの発現は深達度、静脈侵襲の有無と相関が認められた。MMPの発現を生検材料で調べることにより患者の予後を占い、治療に役立つものと考える。
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