1. 肝内結石症胆管上皮へのstem cell factor(SCF)の異常発現 肝内結石症、及び対照肝疾患において、門脈域へのSCFの発現を免疫組織学的に検討した。肝内結石症の拡張胆管には、ほぼ全例にSCFの強い発現が認められた。一方、肝内結石症の非拡張胆管部にSCFの発現は見られなかった。原発性硬化性胆管炎では、約20%の症例で、胆管上皮へのSCFの異常発現が見られた。正常肝や、対照肝疾患(原発性胆汁性肝硬変、薬剤性肝炎、慢性ウイルス性肝炎)では、上皮へのSCFの発現は1例も見られなかった。 2. 肝内結石症胆管上皮、及び周囲線維化部位における肥満細胞の動態 胆内結石症、原発性硬化性性胆管炎のいずれにも、拡張胆管周囲の線維化部位に肥満細胞の著名な浸潤を認められた。正常肝や、対照肝疾患では、胆管周囲への肥満細胞浸潤は目立たなかった。二重染色の結果、浸潤肥満細胞はほぼ全例がSCFのレセプターであるc-kitを発現していた。胆管上皮へのSCFの異常発現と、周囲への肥満細胞浸潤には有意な相関が見られた。 3. 肝内結石症胆管上皮、及び周囲線維化部位の肥満細胞における線維化関連因子(b-FGFやTNF-α)の発現 浸潤肥満細胞における線維化関連因子の発現を二重染色で検討した。多くの肥満細胞は、線維化促進因子として知られるb-FGFやTNF-αを同時に発現していた。肝管上皮自身にb-FGFやTNF-αの発現は認められなかった。肝管周囲の線維化促進に、肥満細胞が重要な役割を果たしていると考えられた。以上の結果より、肝内結石症において胆管上皮に異常発現したSCFが、c-kitを有する肥満細胞を集簇・活性化し、線維化促進因子の産生・放出を誘導する可能性が示唆された。
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