近年、大腸がんにおける遺伝子異常が報告されているが、その発生・進展がすべて解明された訳ではない。そこで我々近年開発された遺伝子・染色体分析法であるComparative Genomic Hybridization法(CGH法)を用いて大腸がんにおける発生・進展に関わる遺伝子異常を検索した。 1) CGH法は本来抽出されたDNAが高分子DNAが必須とされていたため、我々も検体は新鮮凍結材料を用いて検討し、染色体1番、2番、8番、11番、15番にはDNAの増加、5番、6番、7番、9番、15番、18番、19番にはDNAの減少を確認した。しかし、検体数に限りがある点等の問題から検索対象に限界がある。そこで日常病理診断にもちいているホルマリン固定標本を用いたCGH法の確率を試みた。 2) 固定標本中に残存する高分子DNAは蛋白分解酵素であるProtenaseKの連続投与により抽出可能であった。また、この微量な高分子状態のDNAを5'、3'両末端に天然に存在する4塩基で可能な組み合わせからなるランダム・ヘキサマー配列を含むプライマーで増幅するDOP-PCR法を用いて十分な核酸量をする方法を確立し、ホルマリン固定大腸がん標本からCGH法を数例で施行し新鮮凍結材料で確認したと同様な異常を確認した。今後は、更なる症例の検討と精度を追求する予定である。
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