研究概要 |
研究代表者は本研究助成において、申請時の目的を達成した。すなわちR-RasがC3Gの基質として機能し、Junキナーゼ(JNK)を活性化しv-Crkの癌化に関与することを見出し報告した(Mochizuki,N.,et al.,J.Biol.Chem.,2000,in press)。 研究代表者はこれまでニワトリ肉腫のウイルスのコードする癌遺伝子v-Crkの癌化のメカニズムの解明を目的に研究を行ってきており、本研究においてはR-Rasがv-Crk/C3G複合体からのシグナルを媒介し癌化に関与することを明らかにした。V-CrkはSH2/SH3領域からなるアダプター分子でありそれ自身は何ら酵素活性を持っていないにもかかわらずチロシンキナーゼ活性を上昇させて細胞癌化を誘導するが、そのメカニズムは不明であった。我々は独自にv-Crk結合分子C3Gを単離し、その解析を進めていたが1997年までの段階でv-CrkはC3Gを介してJNKを活性化し細胞癌化に関与することを報告していた。しかしながらC3GのJNK活性化に関与する基質は不明であった。本研究では一連のsmall G蛋白を調べることによって、R-RasがC3Gの基質として機能しJNKを活性化することが明らかとなった。 具体的には、活性化型R-Ras-V38は一過性発現によって293T細胞において、JNKを活性化し、野生型R-Ras-WTのJNK活性化能は、Crk、C3Gの共発現によって上昇した。また、Dominant negative from R-Ras-N43は、CrkおよびC3GのJNK活性化能を抑制した。さらに、R-Ras-N43はv-Crkでtrans fromしたNIH3T3の癌化能を形態的にrevertした。これらの結果からR-RasはC3Gの基質としてJNK活性化に関与すると結論づけられた。今後はR-RasのJNK活性化に必要な標的分子の解明を試みる。
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