免疫機能の低下状態にある免疫不全症に逆に免疫機能の一種の亢進状態である自己免疫疾患がしばしば併発することは古典的なパラドクスであり、未だその詳細なメカニズムは不明である。CD40分子のリガンドであるCD40Lの欠損が原因である免疫不全症の高IgM血症の患者においても免疫不全症状に加えて、しばしば自己抗体価の上昇を伴う自己免疫疾患が併発するという事実がある。我々はこの事実に着目し、CD40欠損マウスのT細胞をヌードマウスへ移入する系を用いてその自己反応性を検討し、CD40欠損マウスのT細胞を移入されたヌードマウスは顕著な自己抗体価の上昇を伴った自己免疫疾患を発症することを見いだした。今年度においては、1)CD40欠損マウスのT細胞の中で、CD4陽性T細胞が自己免疫疾患発症のエフェクターとして働くこと、2)CD40欠損マウスのT細胞の自己反応性の亢進のメカニズムとして、T細胞の自己反応性制御に関わるT細胞集団であるCD25陽性CD45RB弱陽性の細胞がCD40欠損マウスのT細胞においては著しく減少していること、さらには、3)CD40欠損マウスの抗原提示細胞には抑制性のサイトカインであるIL-10を高産生するTrlとよばれる調節性T細胞の誘導能が欠如していることを明らかにした。以上、免疫不全症のモデルであるCD40ノックアウトマウスのT細胞の自己反応性が亢進していることをヌードマウスへのhansferのシステムを用いて証明すると共に、そのメカニズムとして、免疫応答の成立に必須であるCD40-CD40L相互作用がその正の機能に加えて、regulatory T cell subsetの生成という負の機能をも有することを明らかにした。
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