我々は昨年度、マウス培養マスト細胞(BMCMC)がa-melanocyte stimulating hormone(a-MSH)のレセプターであるMC1Rを発現しており、a-MSHの存在下では抗原刺激を受けたマスト細胞からのヒスタミン放出が約60%抑制されること、また同時に発現されるサイトカインの内IL-1bとTNF-aの転写を抑制することを明らかにした。また我々はこれまでbHLH-Zip familyに属する転写因子MITFがBMCMCに特異性の高いいくつかの遺伝子の発現を制御していることを明らかにしてきた。MITFに突然変異をもつためにDNAに結合できないmi-MITFをもつmi/miマウス由来のBMCMCでのMC1Rの発現を調べたところ、mi/miBMCMCはMC1Rを発現していないことがわかった。さらにMITFを欠損するtg/tgマウス由来のBMCMCでもMC1Rを発現していないことがわかった。これらの結果よりマウスのマスト細胞ではMITFがMC1R遺伝子の発現を制御している可能性が考えられた。次にmi/miBMCMCに正常型MITF(WT-MITF)を強制発現させたところMC1Rの発現が認められた。このことからMITFはMC1Rの発現を直接制御していることがわかった。次にMC1R遺伝子のプロモータ領域をクローニングしたところ5'上流780塩基の範囲に5箇所のE-box(MITFの認識配列)を認めた。このプロモータをもとに順次切断したプロモータならびにそれぞれのE-boxに変異を入れたプロモータを用をルシフェラーゼ遺伝子の5'端に繋いだレポータ遺伝子をマスト細胞に導入して転写活性を調べた。その結果-477から始まるCACATGモチーフと3'側に5塩基をはさんで隣接するCATGTGモチーフがMITFによるMC1R遺伝子の転写を制御していることがわかった。この2つのモチーフに実際にMITFが結合するのかをEMSA法により調べた。MITF蛋白はこれら2つのE-boxに結合すること、しかしその親和性は異なりCATGTGモチーフに対する親和性のほうが強いことが明らかになった。
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