簡便な遺伝子導入法を用いた遺伝子治療の基礎的研究とアレルギー性疾患治療の試み

1998 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 10770103
• 研究機関: 横浜市立大学
• 研究代表者: 宮城 洋平 横浜市立大学, 医学部, 助手 (00254194)
• キーワード: 遺伝子治療 / アレルギー / Fcレセプター / PCA / IgE / プラスミド

研究概要

アレルギー疾患は近年増加の一途をたどっており、この有効な治療法・予防法の研究、開発は重要な課題である。IgEがFcRを介して感作されたマスト細胞がアレルゲンにより活性化されることがアレルギー疾患の基本枢軸である。IgEの高親和性受容体として知られているRcεRIのα鎖細胞外領域は、直接IgEのFc領域と結合することが明らかにされている。本研究は、このα鎖細胞外領域のみを可溶性の蛋白質として持続的かつ簡便に、直接患部に供給しIgEとマスト細胞の結合を阻止することを狙いとした、プラスミドベクターによるアレルギー疾患の遺伝子治療法の開発を目的としている。
RT-PCR法によりマウス脾臓よりα鎖細胞外領域のみをコードするcDNAを単離し、分泌シグナルとMYC-タグを付加した後、pCAG-GSベクターに導入した(以下pCAG-α)。pCAG-GSは、大阪大学、宮崎博士より供与されたもので、哺乳類で非常に高い発現効率の得られるプラスミドベクターである。まず、pCAG-αをin vitroでHEK293T細胞に導入し、相当量の蛋白質が培養上清中に分泌されることを確認した。また、この培養上清とIgEとを予め混合した後、アレルギー反応のモデルとして知られるラット受身皮膚アナフィラキシー(PCA)を行い、この蛋白質が実際にIgEとマスト細胞の結合を阻止すること証明した。更に、ラット皮内に直接投与されたpCAG-αが、どの程度PCA反応を抑制しうるかを、プラスミドの投与量、プラスミド投与の効果持続時間と併せて検討した。この結果、10μgのプラスミド投与で、コントロールと比較して、pCAGは投与後1日をピークに3日目まで有意にPCA反応を押さえることが判明した。現在、マウス喘息モデル等を用いて、このプラスミドを用いた、より実際に即した遺伝子治療の実験を検討中である。

研究成果

• [文献書誌] Koshikawa N.et al.: "Expression of trypsin by epithelial cells of various tissues,leukocytes,and neurons in human and mouse." Am J Patrhol. 153(3). 934-944 (1998)
• [文献書誌] Miyata S.et al.: "Stimulation of cellular growth and adhesion to fibronectin and vitronectin in culture and tumorigenicity in nude mice by overexpression of trypsinogen in human gastric cancer cells." Clin Exp Metastasis. 16(7). 613-622 (1998)
• [文献書誌] Ott L.et al.: "A Role for Tissue Factor in Cell Adhesion and Migration Mediated by Interaction with Actin-binding Protein 280." J Cell Biol. 140(5). 1241-1253 (1998)
• [文献書誌] Udagawa K.et al.: "Specific expression of PP5/TFPI2 mRNA by syncytiotrophoblasts in human placenta as revealed by in situ hvbridization." Placenta.19(2-3). 217-23 (1998)
• [文献書誌] Hirahara F.et al.: "Differential expression of trypsin in human ovarian carcinomas and low-malignant-potential tumors." Gynecol-Oncol.68(2). 162-5 (1998)
• [文献書誌] Zhou L.et al.: "Evaluation of Epstein-Barr Virus infection in hypopharyngeal careinomas from 37 Japanease" Mod.Pathol.11(6). 509-12 (1998)