研究概要 |
ビオチン欠乏時の毒素産生増強効果(ビオチン効果)が最も顕著な菌株であるClostridium difficile KZ1647を用いて毒素産生増強機序の解析を行った。 1. 通常のビオチン濃度(50nM)とビオチン効果発現条件である1/1,000倍濃度(0.05nM)に調整した合成培地を用いてそれぞれ培養した菌体内タンパクを、SDS-PAGEにより比較した結果、ビオチン0.05nMの場合にはトキシンAおよびB以外に、少なくとも2種類のタンパク(130kDaおよび145kDa)がより強く発現していることが分った。 2. これら二つのタンパクを電気泳動ゲルから抽出、精製し、N末端アミノ酸配列を解析し、130kDaタンパクについては20残基、14kDaタンパクについては19残基を決定した。 3. 得られたアミノ酸配列を基に、遺伝子のクローニングと塩基配列の決定を行った。130kDAタンパクの遺伝子は、塩基数3537であり、計算上のアミノ酸数1179、分子量は128887であった。一方、145kDaタンパクの遺伝子は、3804塩基から成り、計算上のアミノ酸数1268、分子量は140645であった。いずれの分子量もSDS-PAGEの結果とほぼ一致していた。また、各遺伝子の5'末端側の塩基配列は、N末端アミノ酸配列解析の結果と完全に一致した。 4. ホモロジー検索の結果、130kDaタンパクは、ある酸化還元酵素に対して極めて高い相同性を有していた。また、145kDaタンパクは、ある転位反応に関与する酵素に対して高い相同性を有していることが分った。 これらのタンパクと、ビオチン欠乏および毒素産生増強現象との関係について、今後さらに解析を進める。
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