研究概要 |
ボツリヌス(A,B,C,D)型菌をそれぞれ大量培養し、得られた培養上清を硫酸アンモニウムで分画し、沈殿を得た。その後種々の緩衝液(型により異なる)に硫安沈殿を透析し、イオン交換、ゲル濾過、ハイドロキシアパタイトによるクロマトグラフィーを順次行い毒素を精製した。SDS-PAGE、各コンポーネントのN末端アミノ酸配列の解析の結果、以下の事が明らかになった。 1) A,B,C,D型菌の16S毒素およびA型菌の19S毒素は神経毒素(分子量〜150k)、non-toxic non-HA(分子量〜140k)、HAより構成されていた。 2) HAは型により多少分子量の違いはあるが、どの型においても4つのサブコンポーネント|HA1(分子量〜33k),HA2(分子量〜17k),HA3a(分子量〜23k),HA3b(分子量〜53k)|から構成されていた。 A,C,D型菌の16S毒素および19S毒素はヒト赤血球に対して凝集活性(HA活性)を示したが、B型菌の16S毒素は赤血球を凝集させるのに、A型の16S毒素の約100倍量の蛋白濃度を必要とした。赤血球を酵素処理した後、活性の変化を観察した結果、以下の事が明らかになった。 1) 赤血球をプロテアーゼ(トリプシン、パパインなど)処理することによって、C,D型菌の16S毒素のHA活性は減少したが、A型菌のHA活性は変化を示さなかった。 2) ノイラミニダーゼ処理した赤血球を用いた場合、C,D型菌の16S毒素のHA活性はほぼ、消失したが、A型菌の16S毒素および19S毒素のHA活性は変化を受けず、B型菌の16S毒素のHA活性は約10倍上昇した。 これらの結果から、A,B,C,D型菌のprogenitor toxinは構成されているサブコンポーネントは類似しているが、赤血球に対する結合の性質はA型、B型、C,D型で異なっていることが明らかになった。
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