研究概要 |
我々は黄色ブドウ球菌染色体DNAよりStaphylococcus capitisEPK1株が有するepr遺伝子に類似した遺伝子をクローニングしeprhと名付けた。eprhは蛋白質レベルでepr,lifとそれぞれ58、56%の相同性を有していた。また黄色ブドウ球菌や表皮ブドウ球菌のfemと約30%の相同性を有していた。eprは発現するとS.capitis,S.aureusにおいて菌体ペプチドグリガンがglycylglycine cndopeptidase Lysostaphinに抵抗性となる。このことからepr(endopeptidase resistance gene)と名付けられている。eprhはeprのホモログーと考えられたため、eprhを温度感受性プラスミドによって挿入変異した株を作成した。しかしながら、この株はLysostaphinにたいする感受性に変化を示さなかった。またeprhを過剰発現させた株においてもLysostaphin感受性は変化しなかった。ノーザン解析の結果、eprhは通常の状態では発現していないと考えられた。そこでeprのプロモーターの下流にeprhを接続し、黄色ブドウ球菌内で発現を試みたがやはりLysostaphinにたいする感受性に変化は認められなかった。以上の結果からeprhは通常、黄色ブドウ球菌では機能していない遺伝子である可能性が強く示唆された。eprhはアミノ酸の転移に関わる蛋白であると考えられるが、その機能については明らかではない。またeprhの27bp上流にeprhと同じ向きにorfく存在し、他の溶菌酵素と相同な領域を有する蛋白質がコードされていた。このORFをLytNと名付けた。Hisx6tagの後ろにLytNを融合させて発現した蛋白質はS.aureus菌体を溶解したが、M.lutcusは溶解しなかった。以上のことから、LytNは新規の溶菌酵素であることが明らかにされた。
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