我々は、HIV-1変異株に感受性のCD4陽性ヒト脳由来細胞(BT細胞)を分離、維持できる系を確立している。BT細胞は、T細胞株指向性HIV-1株やマクロファージ指向性HIV-1株は感染できないことより、これらのウイルス株の利用するセカンドレセプター(ケモカインレセプター)以外のレセプターがHIV-1変異株の感染に関与していることが推測されていた。そこで、BT細胞へのHIV-1変異株感染に必要なセカンドレセプター(ケモカインレセプター)を同定するために、ケモカインレセプター遺伝子間で保存されている部位のdegenerate primerを用いて、BT細胞のcDNAに対してPCRを行ったところ、TER1/CCR8レセプターが見いだされた。RT-PCR法により、この遺伝子がBT細胞に発現していることと、HIV-1変異株非感受性細胞へのTER1/CCR8遺伝子の導入によって、この細胞が感受性細胞へと変化したことにより、実際にTER1/CCR8がHIV-1変異株のセカンドレセプターとして機能していることが明らかとなった。さらに、TER1/CCR8の細胞外N末端側25アミノ酸より成る合成ペプチドをウサギに免疫後、得られた抗体をペプチドカラムでアフィニティー精製し、この抗体がGSTと融合させたTER1/CCR8タンパク質に特異的に反応することをウエスタン・ブロッテイングにより確認した。現在、この抗体を用いてBT細胞でのTER1/CCR8タンパク質の発現及びHIV-1感染抑制活性について検討中である。
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