本研究はHIVのviral protein R(Vpr)の構造と機能を調べ、治療に応用する技術の開発を目的としている。ウイルスのインテグレースに対するマウスモノクローナル抗体から作製した単鎖抗インテグレース抗体分子をHIV-1のVprに融合せしめた(scAbE-Vpr)。このタンパク質を発現するベクターDNAをHIV infectious cloneDNA(pLAI)とともにヒト細胞293Tにcotransfectしてウイルスを回収した。ウイルス粒子のタンパク質について、ウェスタンプロット法で調べたところ、scAbE-Vprは効率よくウイルス粒子内に取り込まれていた。そのウイルスの感染性をMAGIアッセイ法にて調べた。同じ量のRT活性で比較した場合野生型ウイルスに比べてscAbE-Vprを取り込んだウイルスでは感染性は最大で1000倍低下した。取り込まれた融合分子がこの感染性低下に寄与しでいるものと推測できた。従って、この分子はAIDSの遺伝子治療に応用できるだろう。
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