本研究の目的は、ローリングサークル型複製を遂行するEpstein-Barr virus(EBV)の複製蛋白質であるDNAへリカーゼとDNAプライマーゼに焦点をあて、複製フォークがどのように機能しているのかを明らかにしていくことにある。得られた成果は以下のとうりである。 1) EBV・DNAへリカーゼ/プライマーゼの構成蛋白質と思われるBBLF4、BSLF1及びBBLF2/3蛋白質の組換えバキュロウイルスによる発現系を樹立した。各種組換えバキュロウイルス(AcBBLF4、AcBSLF1及びAcBBLF2/3)は感染昆虫細胞中にそれぞれ90、89及び76kDaの蛋白を発現し、それぞれのウサギ抗血清を用いたウェスタンブロットにてBBLF4、BSLF1及びBBLF2/3蛋白質であることが確認された。 2) 3種の組換えバキュロウイルスを同時に昆虫細胞に感染させ、その抽出液に対して免疫沈降反応を行った結果、抗BSLF1ウサギ血清はBSLF1、BBLF4及びBBLF2/3、すべての蛋白質を沈降させた。 3) 2種の組換えバキュロウイルス(AcBSLF1及びAcBBLF4、もしくはAcBSLF1及びAcBBLF2/3)を同時に昆虫細胞に感染させ、その抽出液に対して免疫沈降反応を行った結果、抗BSLF1ウサギ血清はBBLF4及びBBLF2/3、両方の蛋白質を沈降させた。 4) ヒスチジンタグと融合させたBBLF2/3(BBLF2/3-Ht)蛋白質を発現する組換えバキュロウイルス(AcBBLF2/3-Ht)を作製し、本ウイルスとAcBSLF1及びAcBBLF4とを同時に昆虫細胞に感染させ、その抽出液をmetal affinity resinに吸着させた結果、BBLF2/3-Ht蛋白質と共にBBLF4及びBBLF2/3、両方の蛋白質が回収された。 以上の成果から、これらの複製蛋白質は少なくともBSLF1蛋白質を介して3者の複合体を形成しているものと思われた。
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