研究概要 |
本研究の目的は,交代制勤務を想定した時差ストレス下で,照明の色温度が認知活動へ及ぼす影響を明らかにすることである.本年度は基礎的な研究として,日中または時差ストレス下における認知機能の変動を明らかにすることにあった.認知機能の指標には,事象関連電位のひとつで脳の情報処理過程を反映するP300を用いた.照明条件は色温度5000K,照度500lxの一定条件とした.日中のP300の日内変動に関しては,睡眠・覚醒リズムに異常がない健康な成人男性11名を被験者とし,午前8時,午前11時,午後2時,午後5時,午後8時にP300の測定を行った.その結果,P300潜時に有意な日内変動が認められた.P300潜時は午前8時と午後2時に他の時刻に比べて有意に遅延しており,この時刻で脳の情報処理能力が低下していると考えられた.また,このP300潜時の日内変動は主観的な眠気や注意力の日内変動と対応しており,P300潜時と眠気の間には有意な正の相関が認められ,P300潜時と注意力の間に有意な負の相関が認められた.これらの結果より,認知活動の日内変動を調べるためにP300が有用であることが明らかになった.さらに,時差ストレスがP300へ及ぼす影響に関しては,夜間断眠実験にてその影響を調べた.被験者は睡眠・覚醒リズムに異常がない健康な成人男性9名であった.午後7時から翌朝の午前6時まで2時間毎に計7回の測定を行い,データは現在解析中である.来年度は,これらの実験結果をもとに,時差ストレス下における照明の色温度が認知活動に及ぼす影響を明らかにするための実験を行う予定である.
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