毛髪中の元素濃度は栄養状態の指標として、また臨床症状出現前のスクリーニングとして注目されていることから、昨年イースター島において島民60人の毛髪を採取し含有微量元素の分析を行った。その結果、アルミニウム(Al)、鉛(Pb)、水銀(Hg)、ニッケル(Ni)、銀(Ag)の毛髪中濃度が極めて高い島民の多いことが判明した。今年度は、この結果を確認し、人種等の影響があるか検討した。 イースター島の島民71人から本調査に対するインフォームド・コンセントが得られ、その内68人(男性21人:平均年齢30.0±12.55歳、女性47人:34.7±14.07歳)から後頭部付近の頭皮から約3cm部分の毛髪を0.5g採取できた。毛髪試料はLAEA法にて洗浄、乾燥し、濃硝酸と濃塩酸で分解し、Erlenmeyer flaskに入れ、非イオン水5mlにて希釈した。重金属を含む39元素濃度の測定は、高周波誘導結合プラズマ質量分析法を用いて実施した。その結果、AL、Pb、Hg及びAgは依然高く、チタン(Ti)も非常に正常値より高いことが確認された。また、生体必須元素濃度の多くが正常値より高く、重金属汚染と共に必須元素が豊富である事が認められた。性、年齢、ethnic group間、また毛髪美容による有意な差は認められず、その他のライフスタイルの影響が大きいと推察された。 そのため、来年度は問診票を用いて、基礎疾患や薬剤の投与の有無及びライフスタイルなどについて質問し、元素濃度との関連を調べる。特に食事内容については、島原産の食物を中心とする食事或いはチリ本国から輸入した食品を多く摂取するか、また海産物を主とするか否かについて特に詳細に調査する。飲料水については、水源の種類、位置、使用状況について調査する。
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