1 ALDH2ノックアウトマウスの作成:以下の手順で行った。 (1) aldh2遺伝子を欠損させるターゲティングベクターを構築した。 (2) 上記ベクターの導入後、相同組み換えによってaldh2遺伝子がノックアウトされたE細胞を選別して得た。 (3) 初期胚にこのES細胞を注入し、キメラマウスを作成した。 (4) キメラマウスをC57B6と交配してFlマウスを得た(germline transmissionの確認)。(5) FlヘテロザイゴートからF2マウスを、また戻し交配も進行中である(現在N4)。 ホモ欠損マウスは生存可能で、F2のgenotypeの比率はメンデルの法則に一致したことから、この酵素欠損はマウスの発生過程での致死を誘導しないことが確認された。 2 in vitro系でのALDH2蛋白の解析:野生型マウス肝からのミトコンドリア粗画分で以下の検討を行った。(1) 129及びC57B6マウスの2種のstrain間での肝ALDH2発現レベルの違いを調べた。未処理時、エタノール投与時、共に発現レベルにはstrainの差が見られず、またエタノ単回投与後も、明らかな発現誘導は観察されなかった。この2種はアルコー嗜好性に違いがあると報告されているが、この結果から、ALDH2発現レベルの違いが原因ではないと考えられた。 (2) 生体有害物でALDH2の基質となり得るものを調べた。その結果、既知のALDH2の基質に加えて、メトキシアセトアルデヒドも強い基質特異性を示した。この化合物は代謝産物が精巣毒性を持つと報告されている2-メトキシエタノールの中間代謝物であり、aldh2欠損が及ぼす生体影響が注目される。今後、back crossが終了したノックアウトマウスを用いて、in vivoでの検討を行う予定である。
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