研究概要 |
近年,呼吸機能と身体活動能力との間には密接な関係があるといわれており,急性期患者や長期臥床患者に対して,機能訓練だけではなく呼吸訓練も併用することで,より身体活動能力の改善が良好となるといわれている。本研究の目的は,高齢障害者において,呼吸機能を代表する胸腹部の柔軟性,肺気量および血中酸素飽和度と身体活動能力との関係を明らかにすることである。 本年度は,呼吸機能に何ら問題のない高齢者を対象に,上記測定結果の傾向を検討した。 測定方法は,安静呼吸時の胸郭運動および腹部運動をレスピトレースを用いて測定し,呼吸パターンを検討した。姿勢による安静時呼吸パターンの違いをみるため,仰臥位,座位,立位と姿勢を変化させた。レスピトレースによる測定の間,パルスオキシメーターによる動脈血中の酸素飽和度を測定した。また,全対象者にはスパイロメータにて肺活量を測定した。 結果,呼吸パターンは安静仰臥位では腹式呼吸(胸郭運動に対して腹部運動は約1.2〜5.0倍),安静座位では胸腹式呼吸(胸郭運動に対して腹部運動は約1.0〜1.1倍),安静立位では胸式呼吸(胸郭運動に対して腹部運動は約0.4〜0.8倍)であった。安静呼吸運動において,胸部の動きが顕著であったのは立位であり,腹部の動きが顕著であったのは仰臥位であった。動脈血中の酸素飽和度は97〜99でおり,姿勢による変化はみられなかった。また,肺活量は年齢,体格の平均値レベルであった。 今回の測定結果から,高齢者の年齢による差はみられなかった。今後は,次年度の予定通りに,障害のある高齢者を対象に,呼吸機能と身体活動能力との関係について研究を進めていく予定である。
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