本研究では、厚生省の障害老人のための自立度判定基準のランクAに該当した高齢者を「閉じこもり」と定義し、1997年より山形県内2市において「閉じこもり」実態調査を開始し、その有病率と特徴について明らかにした。1999年はそれらの結果から、「閉じこもり解消」、つまり自立度向上を目的とした健康情報の提供と回想法を組み合わせた介入プログラムを開発した。内容はHaightがhouseboundの高齢者に実施した回想法などを参考にした。対象者は46名であった。各市別に性と年齢(±3歳)をマッチさせて介入群と対照群に分けた。介入の効果を検討するため、介入前後の調査を実施した。項目は自立度判定基準や外出の程度のほか、身体的項目は視力、聴力、歩行・入浴・着脱衣などのADL、心理的項目は主観的健康感、自己効力感、生活満足度、生きがい、社会的項目は老研式活動能力指標などについて尋ねた。介入プログラムは身体面と心理面からなり、身体面の介入では脳卒中予防などのパンフレットを用いた健康情報の提供とし、心理面の介入は回想法という心理療法とした。介入群への介入は月平均2回とし、実施期間は対象者の体調の変化などにも対応できるよう4ヶ月以内で行うようにした。面接は事前に十分なトレーニングを行った研究者、市および保健所の保健婦などが行った。介入群には研究の意義を十分に説明し、文書で同意を得た。 結果、自立度向上における有意な効果は認められなかった。しかし、今回開発したプログラムは回想場面における対象者の表情や応答などの評価結果から考えると、「閉じこもり」高齢者の身体・心理・社会的特徴に対してネガティブな影響はもたらさないことが示された。今後、地域において「閉じこもり」高齢者を要介護にしないための介入プログラムを実施するには、対象者の認知的問題や実施期間、介入の内容など検討しなければならない課題が明らかとなった。
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