本年度は、11歳児児童の半年間の身体組成変化と咬合機能の変化を主に検討した。 対象と方法:対象者の、形態測定(身長・体重・体脂肪率)、握力測定、歯科検診、Dental Prescale(富士フィルム)による咬合機能測定を行った。同時に、生活習慣調査も行った。Dental Prescaleによる咬合機能測定法は、全顎の咬合力と咬合接触面積が同時に測定される。初回の測定6ヶ月後の同様の測定を行い、その変化を観察した。検討は測定開始時、及び6ヶ月後に未処置齲歯がない正常咬合者、男子4名、女子4名を対象とした。 結果:6ヶ月後の男子の全歯列に加わる咬合力は除脂肪体重、体脂肪率と、女子の咬合力は握力と、正で相関する傾向が認められた。6ヶ月間で、男女全ての対象で咬合力が有意に増加し、上下歯列の接触部位の面積を示す咬合接触面積は増加傾向が認められた。一方、単位咬合接触面積あたりの咬合力を示す平均咬合圧は、男女とも6ヶ月間で有意の増加を示さなかった。6ヶ月間の咬合力の変化量は、男子では握力の変化量と、女子では体脂肪率の変化量と正の相関が認められた。6ヶ月間の咬合力変化割合((6ヶ月の変化量)/初回測定値)は、体脂肪率、脂肪体重、握力の変化割合と正で相関する傾向が認められたが、除脂肪体重とは関連が認められなかった。生活習慣との関係においては、例数が少ないため有意な差は認められなかったが、男子の咬合力変化割合が、1週間の学外スポーツ活動時間と、女子の咬合力の変化量が、食事摂取の規則性と正で相関する傾向が認められた。 考察:11歳児では6ヶ月間で咬合機能の有意な発達が認められた。また、その発達割合は身体組成の変化、特に脂肪量の増加と関連していることが示された。生活習慣との関係では、身体活動性、規則正しい食生活が咬合機能の発達に寄与する可能性が示唆された。
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