本研究の目的は、眼底の細動脈硬化と抑うつ状態の因果関係の相互性を明らかにするための縦断的疫学研究のベースライン調査を実施するとともに、断面研究の手法で、細動脈硬化と抑うつ状態の関係を検討することである。研究一年目にあたる本年は、ベースライン調査を実施し、データベースの作成を開始した。 本研究の対象は、某製造業の二事業所に勤務する43-49歳の男性従業員全員とした。定期健康診査にあわせて、抑うつ状態の評価と眼底検査を実施した。抑うつ状態の評価は、米国で開発されたCenter for Epidemiologic Studies Depression Scale(CES-D)を用いて、構造化面接法で実施した。面接の精度を高めるために、面接者には保健婦の資格を持つ看護婦をあてるとともに、事前に面接者の訓練を行った。眼底検査については、無散瞳型の眼底カメラを用いて両眼について、日本循環器病管理研究協議会の手技に従って実施した。眼底検査の結果は、Scheie分類のS所見ならびにH所見によって評価した。また、この他に自記式のアンケートを実施して、ライフスタイルや職業上のストレス、受療状況などの情報も合わせて把握した。 調査の実施状況としては、対象者1001人中、調査への参加に同意した906人について調査を完了し、調査実施率は90.5%であった。調査終了後、直ちに、眼底所見の判定と抑うつ状態の判定を行い、データをコード化した。現在、これらのデータと自記式アンケート調査の結果、ならびに定期健康診査の情報を対象者毎に統合したデータベースの作成を行っている。
|