本研究の目的は、眼底の細動脈硬化と抑うつ状態の因果関係の相互性を明らかにするための縦断的疫学研究のベースライン調査を実施することである。研究2年目の本年は、昨年調査を実施した企業の他の事業所において追加調査を実施した。対象は43-49歳の男全員である。方法としては、定期健康診査を利用して抑うつ状態の評価と眼底検査を実施するとともに、自記式アンケートを同時期に実施して、ライフスタイルや職業上のストレス、受療状況などの情報をあわせて把握した。抑うつ状態の評価については、米国で開発された疫学用抑うつ尺度Center for Epidemiologic Studies Depression Scaleを用いた。眼底検査は無散瞳型の眼底カメラを用い両眼について日本循環器病管理研究協議会の手技に従い実施した。 調査の実施状況としては、対象者783人中、調査への参加に同意した701人について調査を完了し、調査実施率は89.5%であった。調査終了後、直ちに、眼底所見の判定と抑うつ状態の判定を行い、データをコード化した。なお、これらの者のうちScheie分類でH所見で2度以上の者は4%、S分類で2度以上の者は13.6%で、うつ状態の者は7.4%であった。
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