閉経後の女性に多く見られる高コレステロール値について、環境要因とapo E多型による遺伝因子の双方から個人差を検討することは、中高年女性に対する生活習慣病の新しい予防策になると期待してこの研究を行った。企業に勤めている35歳以上の女性184名についてインフォームドコンセントを行った上で採血し、自記および対面式アンケート調査を行った。 アンケート調査とFSH等の女性ホルモンの検査により、閉経前、閉経後かを客観的に評価した。空腹時採血ができた178名のうち39.9%が高コレステロール血症(総コレステロール値(TC)が220mg/dl以上)であり、二次的な高コレステロール値症を引き起こす可能性のある疾患を除外した場合、閉経後群(n=50)(post menopause:最後の月経から1年以上経過しており、かつFSH>35mlU・ml)においては、60.0%にみられた。これに対して、定期的な月経のある群(early perimenopause:FSH<15mlU/ml)では26.6%に、移行期群(n=27)(late per imenopause)は29.7%に見られた。 遺伝因子としてのapo E遺伝子型の多型分析はPCR-SSCP法を用いてタンパクをコードする領域を5つに分けてその全領域について解析した。この集団における、高コレステロール値と関連するといわれるapo E4型の頻度は20.2%であった。これは日本人一般集団の頻度と変わらない。現対象者では、閉経後におけるapo E型とTC値の間に有意な関連は見られていない。一方で、これまでに報告のないapo E変異型が見つかり、そのうちの一つは一塩基置換によるサイレント変異であることが分かった。
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