研究概要 |
N,N-diethylaniline(DEA)は,染料や有機化学合成の中間体等として使われる。以前我々はこの物質の遺伝毒性を検索する目的でDEAによるリンパ球のSCE誘発実験を行いこの物質の強い遺伝毒性を確認した。本研究ではDEAがリンパ球の機能に影響を及ぶすか否かについて検討した。 DEAのin vitro処理による影響:(1)人末梢全血からリンパ球を分離し、in vitroでDEAとS-9mixで1時間リンパ球を処理した後、培地でリンパ球を洗浄しDEAとS-9mixを取り除いた。 (2)NK活性の測定:まず^<51>Cr(Sodium Chromate)で標的細胞であるK562をラベルし、その後DEA処理リンパ球と一緒に混合焙養し、3時間後K562からの^<51>Cr遊離を測定し、NK細胞活性を評価した。 (3)結果としてDEAがin vitroで人末梢血のNK細胞活性を有意に抑制し、この抑制は培地中のDEAの濃度に依存している。 DEAのin vivo被曝による影響:6週令のCBA/Nマウス(♂)を実験群と対照群に分け、実験群の動物に蒸留水に溶解したDEA-HClを100,200,400mg/kgの量で1回皮下投与した。対照群に蒸留水のみを投与した。投与後3と7日目にマウスの脾臓細胞を採取し以下の項目を測定した。 (1)NK活性:YAC-1細胞を標的細胞とし,^<51>Cr遊離による細胞障害反応を指標としてNK活性を評価した。(2)CTL活性:感作培養は,MMC処理YAC-1細胞をstimulatorとして120時間行い,その後,NK活性と同様に測定した。(3)ConAとLPS刺激によるリンパ球幼若化反応:TとBリンパ球の増殖能を評価する目的で,^3H-thymidine取込み法を用いて測定した。 (4)結果として、対照群と比較し、DEA投与群のNK活性とCTL活性が有意に低下し、脾臓の重量、脾臓細胞数及びspontaneousリンパ球幼若化反応が有意に上昇したことを示した。一方DEAがConAとLPS刺激によるリンパ球幼若化反応には影響を示さなかった。1週間後に,これらの影響が回復の傾向を示した。 以上の結果は,DEAがNK活性等の免疫機能に影響を有することを明らかにした。
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