研究概要 |
N,N-diethylaniline(DEA)は,染料や有機化学合成の中間体等として使われる。以前我々はこの物質の遺伝毒性を検索する目的でDEAによるリンパ球のSCE誘発実験を行いこの物質の強い遺伝毒性を確認した。本研究ではDEAがリンパ球の機能に影響を及ぼすか否かについて検討した。一年目にDEAによるヒトNK活性とマウスのNK活性、CTL活性及びその他の免疫機能への影響について検討した。その結果、DEAがNK活性やCTL活性等の免疫機能に影響を有することを明らかにした。前年度の研究結果を踏まえてDEAによるNK活性やCTL活性等への影響のメカニズムを検討するために今年度では以下の実験を行った。 (1)マウスにDEAを皮下投与してから、脾臓細胞を採取しFACS法を用いて以下のリンパ球表面マーカーを解析した。(1)Tリンパ球とそのサブセット:総Tリンパ球は抗CD3抗体を、inducer/helperT細胞は抗CD4抗体を、cytotoxic/suppressorT細胞は抗CD8抗体を用いて解析を行った。(2)NK細胞 :抗pan-NK抗体を用いた。(3)Bリンパ球:抗CD45R/B220抗体を用いた。(4)マクロファージ : 抗CD11b/Mac-1抗体を用いた。(5)有核赤血球:Ter-119抗体を用いた。その結果、DEAがマウス脾臓のマクロファージと有核赤血球を上昇させるが、Tリンパ球とそのサブセット、NK細胞及びBリンパ球の数に影響を与えなかった。これはDEAによるNK活性やCTL活性の低下がこれらの細胞数の減少によるものではなく、DEAがNKやCTLの機能に影響を与えたことを示唆した。 (2)DEAによる血液毒性と急性毒性 : マウスにDEAを皮下投与してから、経時的に死亡数と一般急性毒性を観察すると同時に末梢血のHb濃度、RBC、WBCを経時的に測定した。その結果、DEAのLD50は1283.5mg/kgであり、DEAがマウスのHb濃度、RBC、WBCを減少させ、血液毒性を有する。以上の成績は第73回日本産業衛生学会(平成12年4月)で発表する予定である。
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