本年度は、頭書の研究課題のうち、前半部分及び計画調書で検討していたOSCEの場面への展開を行った。 大学病院医師の初診患者との会話記録のなかで、主訴を問う質問と、その詳細をたずねる質問を、各々第一および第二質問とし、この質問方法について検討を加えた。実際の診療場面では、第一質問に「どうしましたか?」等開かれた質問が用いられ、そこで主訴が把握されたあとの第二質問では、「それはいつからですか?」等直接的な閉じた質問が用いられていた。わが国でも、英国やカナダ、米国などの教科書に範を取った文献では、「問診に際しては開かれた質問をするように」との記述がある。そこで、まず、第二質問について検討し、「主訴となった異常を感じる部位、それに気付いた時間、その後の経過について、詳しく話して下さい」といった一応の基準となる"ことば"をとりまとめるに至った。その後、第一質問については、あまりに漠然とした「開かれた質問」のため、患者の混乱を招くとの意見が得られた。第二質問に倣い、質問を行う医療者が求める情報の概略を示す方向で検討し、「どこにどんな異常を感じますか?」のように、感じている異常の部位と性状を問う"ことば"をとりまとめるに至った。現在、診療に従事している医師の多くは、このような発想による"ことば"の教育は受けておらず、卒前はもとより卒後再教育の必要性が感じられた。
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