1. 方法 乳幼児死亡例の剖検例16例(うち、いわゆる乳幼児突然死例12例)を対象とした。各症例の肺について、最低左右上・下葉の4ヶ所から、ホルマリン固定、パラフィン包埋組織標本を作成した。各標本について、通常のHE染色の他、抗αラクトアルブミン(抗αLA)抗体(DAKO)、抗IgA抗体(DAKO)、抗ヒューマン・ミルク・ファット・グロブリン(抗HMFG)抗体(Immunotech)、抗Cow's Whey抗体(DAKO)を用い、DAKO社製LSABキットにより免疫染色を行った。染色結果は光顕で観察した。 2. 結果および考察 16例中9例で抗αLA抗体に対する陽性反応が認められた。同一症例においては、個々のプレパラートの染色性に大きな差はなかった。抗Cow's Whey抗体に対する反応性は、抗αLA抗体に対するものとほぼ同様であった。(本来、抗Cow's Whey抗体は人乳とは反応しないが、混合乳で栄養されている児が多いため陽性反応を示すことが多かったと考えられた。)ある程度以上の量のミルク吸引が認められた例では、抗IgA抗体も抗αLA抗体と同様の反応性を示したが、少量のミルク吸引しか認めない例では、内因性のIgAとの交差反応のため、判定が困難な例が多かった。抗HMFG抗体に対しては陰性の例が多かった。 以上より、ミルク吸引の免疫組織化学的検索には、抗αLAあるいは、抗Cow's Whey抗体を用いた免疫染色が最も有用と考えられた。ただし、仮にこれらの抗体により肺内にミルク吸引像が認められたとしても、死戦期の心肺蘇生の影響や死後変化の問題等もあり、その意義付けは難しい。今後はさらに症例数を増やし、検討を加える予定である。
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