研究概要 |
本年度は,実験的にマウスに作成した皮膚損傷の治癒過程におけるアポトーシス関連因子特に,Fas抗原(Fas)及びFasリガンド(Fas-L)について,二重免疫染色法により,同一切片におけるFas及びFas-Lの発現細胞について検討した. 【材料及び方法】 8週齢雄性マウスの背部皮膚に,長さ約1cmの切創を作成した.重傷後0.5,3,6,12,24,72,144,192及び240時間目にマウスを屠殺し,損傷部皮膚を採取した.凍結切片(5μm厚)を作成し,冷アセトンで10分間固定した後,抗Fas-L抗体及びアルカリホスファターゼ(AP)標識二次抗体を反応させ,Vector^〓 Blueにより発色(青色)を行った.引き続いて,各抗体の抗原性及びAPを失活させるため切片をマイクロウエーブ照射下でクエン酸緩衝液(pH6.0)に浸漬(90-95℃,10分)した後,抗Fas抗体及びAP標識二次抗体を反応させVector^〓 redにより発色(赤色)を行った. 【結果及び考察】 重傷後12時間までの急性炎症期では,好中球主体の炎症細胞浸潤を認めたが,これら好中球はFas及びFas-Lともに陰性であった.重傷後24時間目からはマクロファージの浸潤が著明となり,これらマクロファージの細胞膜や細胞質にFas及びFas-L陽性所見を認めた.また,重傷72時間目からは線維芽細胞の増殖や肉芽組織形成が観察され,線維芽細胞の線維膜や細胞質にFas及びFas-Lの局在を認めた.さらに,これらのマクロファージや線維芽細胞にはFas又はFas-L単独で陽性を示すもの以外に,両者が陽性を示す細胞とが混在して認められ,Fas-Fas-L系を介したアポトーシスが皮膚の損傷治癒過程に重要な役割を果たしている可能性が示唆された.
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