研究概要 |
1.ヒト体組織中ペンタゾシンの定性・定量法の開発 (1) 液体クロマトグラフィー・質量分析法を用いた分析 合成麻薬の1種であるペンタゾシンを筋注後,急死した事例につき司法解剖(刑事訴訟法に基づぐ鑑定)を行う機会が有り,投与薬物に誤りがなかったかあるいは投与量が適正であったか否かなどを判定するために体組織中ペンタゾシンの分析法を開発することとなった.三段階液液抽出報を用いて試料を調製した後,高速液体クロマトグラフィーに高速原子衝撃質量分析計をオンライン接続した装置を用い,定性・定量を試みた.その結果,ペンタゾシン標品及び内部標準物質のマススペクトルでは擬分子イオンがベースピークとして確認され,調製試料においても標品クロマトグラムピークと同一の保持時間に擬分子イオンと等しいm/zのイオンが確認されたことから,本事例において投与薬品の過誤は否定された.擬分子イオンを対象としてマスクロマトグラムを作成し,試料中ペンタゾシン濃度との間に検量線を作成したところ,10の3乗以上にわたり検量線は直線性を示した. 本法はヒト体組織中ペンタゾシンの定性・定量に対応できるものと判断し,その成果を学会発表した. (2) 高速液体クロマトグラフィーを用いた分析 上述の方法を液体クロマトグラフ・質量分析計よりも安価で,一般に普及している高速液体クロマトグラフで利用できるよう改変を行った.移動相にはリン酸緩衝液と有機溶媒の混液を,検出器には蛍光検出器を用いることで,試料中ペンタゾシンを高感度に分析することが可能であることが明らかとなり,その知見について学会発表を行った. 2.ヒト体組織中ガス状有機化合物・揮発性有機化合物の分析法の検討 揮発性の高い農薬の服用が疑われる事例,乱用目的で炭化水素ガスを吸引後死亡したと考えられる事例などを解剖・検案する機会があり,上述成分の定性・定量法を開発すべく検討中である.
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