研究概要 |
肺臓損傷の免疫学的証明法を開発するため、本年度は1)SP-Dの分離精製、2)SP-Dのサンドイッチ酵素免疫測定法の開発、3)SP-Dの臓器特異性の検討について行った。先ず羊水を遠心分離(30krpm,1hr.)後、その上清に、2mMとなるようにCaCl_2を添加し、Maltose agarose gelと4℃で一晩反応させた。次いで非吸着成分を除去した後、EDTA添加により吸着成分を溶出させた。溶出分画は、濃縮後、Ultrogel AcA 34を使用したゲルろ過法によって精製した。この第一分画は、SDS-PAGEにより、単一でM.W.43kDaを示すことが確認された。次いで単離したヒトSP-Dをウサギに免疫し、抗ヒトSP-D血清を得た。抗ヒトSP-D血清から塩析並びにイオン交換クロマトグラフィー法によりIgGを調製した。本IgGとSP-Dとの反応はウエスタンブロットにより確認された。次いで石川らのマレイミド・ヒンジ法に従って、IgGからFab'を作製し、これにマレイミド基を導入したHorseradish peroxidase(HRP)を標識し、Fab'-HRP複合体を調製した。この調製したFab'-HRP複合体を二次抗体、IgG(ポリスチレンボールに吸着)を一次抗体とし、サンドイッチ法によるヒトSP-Dの高感度酵素免疫測定法を開発した。作製した測定系の検出限界値は0.034ng/mlであり、0.034ng/mlから34.4ng/mlまでの範囲で直線性を示しこの範囲で定量が可能であった。続いて総蛋白濃度0.03mg/mlから3mg/mlの範囲で、肺臓、肝臓、腎臓、心臓、牌臓、脳、骨格筋、膵臓、小腸の各臓器との交差反応性を検討したところ、肺臓に特異性の高い測定系であることが確認された。更にSP-DのcDNAをプローブとしたノーザンブロットを行い、SP-Dの臓器内発現について検索した結果、肺臓で特異的に発現していることが確認された。
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