実際のSIDS症例を含めた様々な寝具環境における再呼吸動態を実験動物(生後数ヶ月の乳児とほぼ同体重の兎)を用いて検討した。昨年度の実験結果を踏まえて、麻酔深度の影響や実験動物の個体差の影響を最小限にするため寝具環境パターンの順番をランダムに入れ替えて平均化する方法以外に、死腔を若干小さく抑えた実験回路を新たに作成して追加実験を行った。実際に死腔を小さく抑える方法としては、実験回路のチューブの口径を狭いものに換えるか、実験回路のチューブ自体を短くするしかなく、前者では逆に気道抵抗を上昇させて呼吸状態を悪化させてしまうことが予想されたため、後者の方法で実験した。結果的には、実験回路自体の規模の点から極端なチューブの短縮化は実現できず、データにそれ程大きな変化は認めなかった。 我々が従来行ってきた、人形モデルをうつ伏せ寝にしてシリンジによる模擬呼吸により再呼吸動態を評価する方法は、実際の生体の呼吸を用いていないため、その結果の妥当性にやや不安があった。本研究では実験動物、即ち生体を用いた実験系においても、我々が従来から行ってきた方法によるデータとほぼ類似したパターンをとることが判明し、シリンジによる模擬呼吸を用いた再呼吸動態の実験結果の妥当性を確認することができた。また、実験動物(生体)を用いた実験の場合、麻酔深度の影響は呼吸状態そのものを評価する本研究の性格上どうしても無視できないものであり、実験動物の個体差の影響なども考慮すれば、乳児寝具における再呼吸動態の評価には従来のシリンジによる模擬呼吸を用いた再呼吸動態の実験系が最も優れていることが明らかになったことは、本研究の成果と言えよう。本成果は、今後引き続き行われるSIDS症例の乳児寝具における再呼吸動態の評価に応用する予定である。
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